昭和四年に発表された「孤島の鬼」。同性愛、怪奇趣味、エログロ、本格推理、冒険譚、様々な要素が盛り沢山すぎていささかバランスに欠くものの、乱歩らしさ満開の長編だ。
白眉は奇妙な長い手記で、実に恐ろしく悲しく、そして美しい。
その手記から生まれたmetro「二輪草」は、ありがたいことに大好評満員札止めとなった。
この演目はこれまでの脚色技法を捨て、「文学の芸能化」を試みたもので、書いたときから上演を重ねられればと思っていた。だから短いスパンで再演となったことは、大変嬉しい。
磨くことで石が輝きを変えるように、座長月船は更に美しく凄い演技を見せてくれるだろう。
metro真夏の悪夢、新宿ゴールデン街劇場「二輪草」に期待していただきたい。
天願大介