「陰獣」のヒロイン静子と「化人幻戯」のヒロイン由美子。陰と陽、静と動。まったくタイプの違う二人の美女が舞台で繰り広げる美しい悪夢。二つの物語はやがて重なり溶け合って、甘美な迷宮が出現する!
各公演60席しかご用意できない小さな劇場です。ご希望の日時はお早めにご予約ください。
チラシに掲載されておりました佐野史郎さんのトークイベントは、2009年1月26日(月)から23日(金)に変更になりました。ご了承くださいませ。26日(月)のトークイベントのゲストは小説家の京極夏彦さんです。
東京メトロ東西線「神楽坂」駅 1番出口より徒歩約6分
東京都新宿区西五軒町2-12
TEL:03-3235-7990(オフィス)/03-3235-2248(ホール)
当日・前売り:4500円(日時指定・全席自由)
チケットは当日引換となりますので、代金は受付にて精算をお願いします。
また、チケットの郵送はお断わりしております。
受付開始・当日券販売:開演の45分前
開場:開演の30分前
※開演5分前までにお越しいただけない場合、当日券のお客様を優先する場合がございます。
※ご予約の方も開演後はご入場いただけない場合がございます。
※未就学のお子様の入場はお断わりいたします。
江戸川乱歩は自身の全作品の中で、中短篇なら「陰獣」が一番よいと言っていたという。
何を最高傑作と呼ぶか難しいところだが、乱歩の優れた部分が結実している「陰獣」は、文句なく代表作の一つだ。「陰獣」には乱歩自身をモデルにした大江春泥という探偵小説作家が登場する。突然現れセンセーショナルな作品を次々に発表し、忽然と消えた天才作家。この作家の正体を巡る不気味な謎、そして美貌の令夫人静子の秘められた過去、主人公との世を忍ぶ恋、繰り広げられる変態性欲の宴と残忍な殺人事件、そして暴かれる静子の恐ろしい秘密。
いかにも道具立てが揃っていて、ああ、また例の乱歩調かと思われるだろうが、どうしてこれは黴の生えた安全な探偵小説ではなく、現代に生きる我々が読んでも心が揺れる、危険な小説である。「陰獣」を戯曲化するにあたって、もう一作、乱歩作品を取り上げることにした。それは「化人幻戯」という作品で、乱歩は相当意気込んで(「陰獣」をかなり意識して)書いたのだが後に失敗作だと語っている。そのためかこの作品は評価も低い。
しかし僕は「化人幻戯」を初めて読んだとき、大詰め、ヒロインの由美子が明智小五郎に真相を語る場面で鳥肌が立った。
昭和二十九年にこのヒロインの告白を書いた江戸川乱歩という作家は凄い。「陰獣」にいたっては昭和三年に書かれているのだ。乱歩は懐古趣味の作家ではない。間違いなく世界の前衛であったと思う。
だとすれば安全な舞台を作るわけにはいかない。
乱歩の最高傑作と失敗作を重ね合わせ、静子と由美子という二人のヒロインの無垢な魂と暗い愛欲を描いてみたい。「うつし世は夢、夜の夢こそまこと」「恐ろしき身の毛もよだち美しき歯の根も合はぬ五彩のオーロラの夢をこそ」と好んで色紙に書いた乱歩にふさわしい、美しい悪夢のような、しかし耽美的ではない舞台を現出させたい。
明智小五郎は何故、犯罪者に惹かれるのだろう? 何故、美しい女性犯罪者たちは明智小五郎に恋してしまうのか? それは明智自身が犯罪者的資質を持っているからだ。明智には犯罪者の心が我がことのようにわかるのだ。乱歩の小説が我々の心を捉えて離さないのは、我々の中にも黒々とした(ロマンティックではない)冷たい闇が存在しているからで、そこには極めて今日的な問題が潜んでいると思う。
繰り返す。乱歩は新しい。
映画監督が舞台の演出をするのだから、当然映画的な手法は使わない。映画は監督のものだが舞台は役者のものだ。猿回しのように稽古して同じことを繰り返すだけの舞台なぞ誰が観たいものか。何が起こるかわからないから、わざわざ劇場まで足を運ぶのだ。
聞くところによれば最近フランス人が「陰獣」を映画化したらしい。なかなか目の付けどころがよろしいが、所詮はフランス人である。我々はこれぞ乱歩、これぞ「陰獣」という舞台をお目にかけよう。劇場は古い東京の街・神楽坂にある。ぜひその瞬間に立ち会っていただきたい。
東京のアンダーグランドを縦横に駆け抜けるmétroの旗揚げにふさわしい舞台をお約束する。
出演 | 丸山厚人、池下重大、鴇巣直樹、métro(月船さらら・出口結美子) |
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演出・台本 | 天願大介 |
原作 | 江戸川乱歩 |
舞台監督 | 三津久 |
舞台美術 | 加藤ちか |
舞台照明 | 沖野隆一(RYU CONNECTION) |
音響 | 青陰佳代(音スタ) |
音楽 | 平本正宏 |
衣装 | きよ彦 川上羽衣 |
着付け | 小林美紀 |
演出助手 | 木村茂之 高澤俊太郎 |
制作 | métro・佐藤史恵 |
宣伝写真 | moco |
宣伝美術 | 上野はじめ 三浦伊織 |
宣伝など | 庄司信晴(PAL) 小林宗明(PAL) |
宣伝用ヘア | セピア倶楽部 下北沢店 |
協力 | 株式会社PAL 株式会社CUBE 株式会社リコモーション 井村昂 花柳輔礼乃 |
企画・製作 | métro |